邦画のミステリーサスペンスが好きな方は『愚行録』を観てみましょう!ただのミステリーサスペンスではなく、人間の醜さからのホラー要素も感じさせる内容なので、嫌な後味になる映画を好む方にはとてもおすすめの作品なのです。
今回は、『愚行録』のネタバレを含むあらすじや、キャスト、隠されている謎について紹介します。キャストも豪華で、内容も濃く、観ごたえ十分の映画『愚行録』をチェックしてみましょう!
目次
映画『愚行録』とは
石川慶監督長編映画デビュー作品
『愚行録』は2017年に公開された石川慶監督の長編映画デビュー作品です。石川慶監督は、ポーランド国立映画大学で演出などを学んだ後、短編作品を制作していましたが、『愚行録』で初めて長編映画の監督を務めました。
初の長編作品にも関わらず、第73回ベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門で日本で唯一正式上映される作品になるなど、輝かしい功績を残した話題作となります。
また、作中流れる音楽は、作曲家大間々昂によるもので、流暢な音楽が作品に繊細な抑揚を施し、さらにどこか不気味さも感じさせるでしょう。
貫井徳郎のミステリー小説が原作の映画
映画『愚行録』は、原作の貫井徳郎原作の小説『愚行録』を映画化した作品です。第135回直木賞候補作に選ばれるなど高い評価を受けたミステリー小説で、映像化不可能と作者自身が発言したほど複雑な人間の感情や、人間関係が入り組んでいます。
映画を観た後に、小説を読んでみると、また違った捉え方ができるのではないでしょうか。映画『愚行録』を観た人も、原作の小説を読んでみることをおすすめします。
『愚行録』の簡単なあらすじ
次に、『愚行録』をまだ観ていない方向けのネタバレを含まない簡単なあらすじを紹介します。エリートサラリーマンの田向浩樹(小出恵介)と美人で完璧な妻・友希恵(松本若菜)、浩樹と恵の一人娘の3人家族である田向一家は、突如一家残殺事件の被害者となりました。
ところが一家惨殺から1年を過ぎた現在でも事件は迷宮入りをしており、主人公の記者・田中武志(妻夫木聡)は真相を突き止めるべく取材を始めます。
数々の証言者や昔の知人たちに取材をしていく中で見えてきたのは、一見幸せそうな田向一家の驚くべき姿だったのです。そして、さらに驚愕の真相を知ることになるのでした。
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『愚行録』結末までの【ネタバレ】あらすじ
次に『愚行録』のネタバレを含むあらすじを紹介していきます。映画を観たけどもう一度内容を復習した方や、観る前に内容を知りたい方は、読んでみましょう!
【ネタバレ】あらすじ①妹と未解決殺人事件の再調査
満員のバスで座席に座っている主人公の田中武志は、他の乗客に老人に席を譲れと注意されます。武志が老人に席に譲ると、足を引きずっており転んでしまいました。足を引きずりながら途中で降りた武志を見て、注意した乗客と、席を譲られた老人は気まずそうにします。
ところがバスが見えなくなると武志は、不自由だった足はフリで普通に歩きはじめるのでした。場所は変わり、警視庁城北警察署に来た武志は育児放棄をしたことで拘留中の妹・光子に面会します。光子は武志が来たことに喜んで普通に話しかけ全く罪の意識が感じられません。
発見された3歳の娘・千尋は1歳程度の体重しかなく、重度の栄養失調だったのにもかかわらず、どこか他人ごとに受け止めている光子は精神的に異常がある可能性があり、千尋も意識不明の重体なので基礎になる可能性が高いのです。
弁護士の美沙子は、光子の精神が不審に感じ精神鑑定をしてみる価値があると告げました。面会が終わり、記者である武志は編集長に、一年前に起きた一家惨殺事件の特集を組ませてほしいと上司に志願します。
警察ですらいまだ解決していない事件を取材したところで無駄だと思う上司ですが、妹が拘留中の武志に同情し取材の許可を出すのでした。
【ネタバレ】あらすじ②田向夫婦について証言する人達
取材許可がおりた一家惨殺事件について取材を始めた武志は、殺害された一家の主でありエリートサラリーマンである田向裕樹の同僚だった渡辺正人のもとを訪ねました。田向裕樹と渡辺正人は、同じ稲大出身のこともあり飲み仲間で、遊び仲間で、女遊びも激しかったと言います。
そのこともあり、恨みを買われていたのではと武志が言うと、それは自分も同じだった、あんな良いやつがなんで殺されたのかと涙を流しました。
二人目の取材相手は、田向裕樹の妻・夏原友希恵の友人である宮村淳子です。二人が通っていた文応では、大学から文応の外部生と高校から文応の内部性の二種類があり、外部性は内部性に気に入られようと必死でした。
夏原友希恵は外部性でしたが、持ち前の美貌で外部性からも一目置かれており、媚びを売ることなく内部生徒も仲が良かったのです。誰からも好かれる夏原友希恵のことを冷ややかな目で見ていた宮村淳子は、後に当時の彼氏・尾形孝之を夏原友希恵に取られてしまいました。
さらに、はっきりと「夏原さんのことあまり好きじゃなかった。ああいう死に方は夏原さんらしい」と言うのです。武志は次に宮村淳子の元交際相手・尾形孝之に取材に行きます。
宮村淳子は夏原友希恵のことが嫌いだと言っていましたが、尾形孝之は「宮村淳子は夏原友希恵になりたかったんじゃないの」と言いました。
宮村淳子は負けず嫌いで、自分よりチヤホヤされている夏原友希恵に妬ましい気持ちがあったのです。話を聞き終わると武志はタバコを吸っていた尾形孝之にポケット灰皿を向け、そこに吸い殻を入れるのでした。
【ネタバレ】あらすじ③新たな証言者と殺人
取材を終え武志は必死で記事を書き上げましたが、販売された週刊誌には芸能人のスキャンダルが表紙に大きく取り上げられました。雑誌販売日の夜「私が誰より田向裕樹を知っていて、犯人も検討がつく」と連絡が入ります。電話をかけてきたのは、田向裕樹の大学時代の元カノ・稲村恵美です。
武志は稲村恵美が待つ田舎のレストランに取材に着ました。稲村恵美は赤ちゃんを抱っこしながら、5年前に父親の会社が倒産したことで東京から田舎に身を寄せたと言います。田向裕樹とは大学入学当初に少し付き合い別れ、就職活動が始まる頃に再び連絡があり少し関わったことを話しました。
入学当初以来の久しぶりの再会で田向裕樹は「商社に就職したいから稲村恵美の父親を紹介してほしい」と図々しい頼みをし、稲村恵美は腹を立てますが仕返しをしたくなりキープとして関係を持つことを条件に父親を紹介したのです。
ところが、田向裕樹は別の会社で内定をもらい、稲村恵美の父の会社を断りました。稲村恵美は、内定の詳細を聞くと別の女性のコネを使い内定をもらった事実を聞くと怒り、その女性を呼び出し田向裕樹が二股していたこと、利用していたことを暴露します。
結果的に、田向裕樹は二つのコネで内定した会社を蹴って、現在の勤め先である会社に実力で内定を掴みました。
稲村恵美は、田向裕樹を殺したのは浮気をされた妻の夏原友希恵が一家心中をするつもりで殺したんだと推測します。そして、抱っこをしている赤ちゃんは田向裕樹との子供であることを匂わせるのでした。
武志は取材を終えると、稲村恵美の証言をもとに新たに記事をかき上げ、雑誌で大きく取り上げられたのです。場面は変わり、武志は弁護士の質問に答えていました。武志と光子は両親から虐待を受けており、光子に至っては父親から性的虐待も受けていたのです。
母親が出ていき、性的暴行を加える父親に耐えかねた武志と光子は学生時代に家を出ます。光子の旦那も分からないと武志は悲惨な過去を淡々と話していくのでした。
その後、宮村淳子から光子が犯人ではないかと電話があり、武志は二度目の取材に向かいます。宮村淳子は武志と光子が兄弟と言うことは知らずに、大学時代のことを話し始めました。光子も宮村淳子と同様に夏原友希恵に憧れを持っており、夏原友希恵の内部学生との仲に深く関係していました。
光子は美人ですが家庭環境が悪い為、内部学生は結婚相手には選びません。しかし、遊び相手にはちょうど良く、夏原友希恵は自分の株をあげるために光子に内部学生の男性たちに肉体関係を持たせていたのです。
結局卒業する頃には光子は遊び人として誰にも相手にされなくなり、挙句の果て父親も分からない子供を産み、育児放棄をし捕まってしまい、宮村淳子は光子が恨んで殺害したのではないか、さらに、あんな生き方はしたくないと言及しました。
その言葉を聞いた武志は、知らなかった光子の学生時代の過去も相まって宮村淳子を殺害してしまったのです。そして、宮村淳子が使っていた灰皿に、尾形孝之の吸い殻を入れ偽装工作をします。その後、尾形孝之は宮村淳子の元交際相手で殺人犯として逮捕されたのでした。
【ネタバレ】あらすじ④二人だけの秘密
意識不明の重体だった光子の娘・千尋が亡くなりました。光子は壮絶な家庭環境から、自分は幸せな家庭を築きたい、好きな人との子供を授かりたいと言う願いを持っていただけなのです。しかし、娘は笑わず、シングルマザーの辛さも相まって疲れ果ててしまいました。
そんな時に街で夏原友希恵を見かけます。自分のすっぴんでみすぼらしい姿とは対照的に、夏原友希恵はおしゃれをし娘と手をつなぎ高級デパートから出てきたのです。一瞬目が合い光子は微笑みかけますが夏原友希恵に完全に無視をされてしまします。
光子は親子の後をこっそり着いていったことで、郊外の住宅街の一軒家に入っていく親子と、夏原友希恵と娘の帰りをにこやかに待っている旦那の幸せな光景を目撃してしまいました。自分が望んでいた光景と、自分の現状に追い込まれ、妬みから一家を惨殺してしまったのです。
弁護士は光子の母親の元へ訪ねていました。千尋は性的虐待をしていた父親との子供と思っていましたが、時系列的に違うことに気づくのです。場面は変わり警察署では光子に会いに武志が面会に来ています。
光子は相変わらず嬉しそうに武志に話しかけ「私は秘密が大好き。誰にも言えない秘密っていいよね。私の味方はお兄ちゃんだけよ。大好き」と言うのです。
一方武志は暗い顔をしており、バスに乗ると満員ですが今度は妊婦に自ら席を譲ります。しかし、表情は暗いまま、のしかかる殺人の罪、妹光子のこと、近親相姦を背負い続けるのでした。
『愚行録』の主要キャスト
次に『愚行録』の出演キャストを紹介します。妻夫木聡さんをはじめとした豪華で演技派な俳優たちばかりなので、一緒にチェックしていきましょう!
田中武志/妻夫木聡
主人公の田中武志は女性週刊誌の記者をしており、一年前に起きた一家殺人事件の取材をしています。幼少期の家庭環境は悪く、妹の光子が育児放棄と殺人で警察に捕まり、自分も殺人をしてしまいました。光子との間にある秘密を抱えていて、声が小さく暗い男性です。
田中光子/満島ひかり
田中光子は、自身の幼少期から虐待・性的虐待を受けてた悲惨な過去を持ちます。また、実の娘を育児放棄し拘留中の身ですが、罪の意識が薄く、反省の色が見えません。その為、作中では精神異常も疑われていました。
田向浩樹/小出恵介
田向浩樹は、一家惨殺事件の被害者です。エリートサラリーマンで、自分の成功の為なら手段を選ばない性格の持ち主でした。また、女遊びも激しく、多方面から恨みを買っていたでしょう。
田向(夏原)友希恵/松本若菜
田向(夏原)友希恵は一家惨殺事件の被害者のひとりで、田向浩樹の妻です。美人で誰からも好かれる女性ですが、友人の彼氏を取ったり、光子を利用したりとあくどい裏の顔も持っていました。
宮村淳子/臼田あさ美
宮村淳子は、田向(夏原)友希恵の大学時代の同級生です。きつい口調で負けん気の強い性格な為、素直に田向(夏原)友希恵に憧れていると言えませんでしたが、田向(夏原)友希恵のほうから近づいて関わりを持ちます。
ところが田向(夏原)友希恵に当時交際していた彼氏を取られてしまい仲違いしました。また、最終的にその口調のせいもあって武志に殺されてしまいます。
尾形孝之/中村倫也
尾形孝之は、宮村淳子の元交際相手でしたが、強気な宮村淳子とは違い、自分の話を優しく聞いてくれる田向(夏原)友希恵に惚れてしまい、乗り換えます。田向(夏原)友希恵にベタ惚れだった為、田向(夏原)友希恵についての証言は褒めるものばかりでした。
稲村恵美/市川由衣
稲村恵美は、田向浩樹の元交際相手で、不倫相手です。田向浩樹にとって特別な存在である、自分が一番田向浩樹のことを知っていると強い執着を見せており、抱きかかえていた子供は、田向浩樹の子だと匂わせる発言もしていました。
『愚行録』の見どころ
『愚行録』の見どころは、仕掛けられた3度の衝撃と言われている衝撃的な事実たちでしょう。武志はただの記者ではなかったですし、千尋の父親についてなど、ストーリーが進めば進むほど、観る側をどんどん裏切っていきます。
また、惨殺事件の犯人がまさかの人物な為、物語の前半と後半で話がだいぶ変わってくるのではないでしょうか。1度だけでなく2度3度観返すことで、また違った捉え方ができる作品でしょう。
『愚行録』の隠された謎を【ネタバレ解説】
『愚行録』は伏線のような謎が隠されていました。物語中では、はっきりと言及はされていませんが匂わしているので、謎について解説していきます。『愚行録』を既にみた人で、あれは何だったんだろうと疑問が残っている方はぜひチェックしてみましょう!
隠された謎①武志は田向家殺害の犯人を知っていた?
武志は光子が一家惨殺の犯人であることに気づいていたから、1年以上も未解決の事件を追ったのでしょうか。
光子の精神の異常を感じており、罪を償うように仕向けたのか、それとも他の犯人を捜したかったのか、真相はわかりませんが、光子が犯人だと分かっていなかったら、1年も前の一家惨殺事件を掘り返そうとはしないでしょう。
隠された謎②光子の子供の父親は誰?
千尋の父親についても後半で、レイプをしていた光子の父親ではないと明かされているだけではっきりとは言及されていません。しかし、光子の兄への激愛っぷりや、二人だけの秘密と言う台詞からも、恐らく武志が千尋の父親なのではないでしょうか。
唯一信頼できる兄のことを慕う妹と、妹を守らないといけない気持ちが強い兄と、悲惨な家庭環境も相まって、近親相姦になってしまったのかもしれません。
隠された謎③武志がラストで妊婦に席を譲った理由は?
武志は物語の冒頭では自ら自分の意思では老人に席を譲っていませんでした。むしろ相手に罪悪感を感じさせるために、障碍者のフリをしたほどです。しかし、物語の最後のシーンでは妊婦に自ら席を譲っています。
『愚行録』はタイトル通り人間の醜さを描いた作品です。妊婦に席を譲った武志の行動から、武志自身の醜い感情や行動の終わりを表そうとしたのではないでしょうか。自ら殺人を犯し、事件について深いところまで知った武志がこの先どのような行動をとっていくのか想像させるシーンなのかもしれません。
『愚行録』は人間の愚かさが浮き彫りにされた映画
今回は『愚行録』のあらすじやネタバレを含むあらすじを紹介しました。『愚行録』はとにかく期待を裏切る作品です。ミステリー映画や、後味の悪い映画が好きな方はぜひ観てましょう。
また、疑問に思う点もいくつか出てくるのですが、隠された謎についても解説しているので、解説を読んでもう一度『愚行録』を観ると違う見方ができておすすめです!人間に醜さや家庭環境についても考えさせられる内容となっているので、チェックしてみましょう!