ジブリ作品の中でも圧倒的な人気を誇る「もののけ姫」ですが、見れば見るほどもっと「もののけ姫」のことが知りたくなってくるはずです。ここでは「もののけ姫」ファンの方に向けて、「もののけ姫」の考察を行いました。
「もののけ姫」が生きた時代、そしてその背景に隠れている事実とは一体何なのでしょうか。ここでは「もののけ姫」のあらすじを見ながら、物語の真相をチェックしていきましょう。
もののけ姫とは?
もののけ姫は1997年にスタジオジブリから、宮崎駿監督作品として全国の映画館で上映されました。自然の強さがある一方、人間に奪われていく自然の苦しみを日本を舞台に赤裸々に描かれています。
スタジオジブリらしくないリアルな世界観に、公開当初から大きな注目を集めた「もののけ姫」は、最終的には193億円という大ヒット興行収入の記録を叩き出したことも歴史と言えるでしょう。もちろん、現在でも宮崎駿監督作品の代表作と呼ばれています。
もののけ姫のざっくりあらすじ
平和な村で暮らす1人の少年「アシタカ」の前に、「タタリ神」と呼ばれた異様な生物が村を襲ったことで物語はスタートします。タタリ神の動きを止めるべく弓矢で殺しますが、その代償としてアシタカの右腕には呪いが封印されてしまいました。
その呪いはいずれアシタカを呪い殺すという事実を胸に、彼は1人村を出て西を目指します。その道中で怪我人を助けたアシタカは村へ送っていこうとした矢先、大きな山犬達に育てたれた少女「サン」に出会うことになります。
その後無事に怪我人の村である「タタラ場」に着きますが、そこには人間と自然、そして森の精霊、生き物達の戦いが繰り広げられている事実に直面する形となりました。
もののけ姫の描かれている時代背景
もののけ姫の時代背景を検証してみましょう。まず物語の冒頭でエミシ村のおばさまのセリフに「大和との戦に破れてこの地に潜んでから五百十余年」という言葉があります。
ここで表現される大和は大昔の近畿地方の政権、蝦夷は関東や東北の人々のことを指しています。更にこの両者の戦いがあったのは1051年~1062年、1083年~1087年の2回あったことが歴史を見ても分かっています。
このことから推察するに、もののけ姫の舞台は1570年あたりの室町時代という答えになりました。応仁の乱をきっかけに室町幕府が弱っていく背景も加えると、1573年前後だということが浮き彫りになるはずです。
もののけ姫に登場する室町時代を推測できるもの
ここでは、もののけ姫が室町時代のお話であるという証明になる背景や人物を詳しく解説しています。室町時代である証拠が、実は映画の中にもたくさん散りばめられています。
登場するもの①石火矢
もののけ姫の中にたびたび出てくる武器として目立つのが、「石火矢」の存在です。これは室町時代初期に使用されていた武器で、西洋から入手されていたことも記録が残っています。
石を弾丸に火薬で攻撃するスタイルは、当時は「国崩し」と言われるほど圧倒的な破壊力を持っていました。ちなみにもののけ姫に出てくる石火矢は明の火槍をベースにしていると言われています。そして石火矢を利用する「エボシ」は、明仕様の石火矢を更にバージョンアップさせたかのような武器に仕上げています。
登場するもの②アサノ公方
当時のタタラ場付近の地域を仕切っていた勢力が、「アサノ公方」です。驚異的な権力を持つことが、ジコ坊の「アサノか、大侍だな」という言葉からも分かるのではないでしょうか。そのアサノ公方はタタラ場がつくる鉄を欲していました。
しかしエボシはそれをすべて拒否しており、嫌がらせを受ける形になります。ちなみにアサノ公方は勢力・権力だけではなく、冷静な判断も下せる頭脳派であることも、アシタカとの戦いで分かっていますので、その時代の勢力としては非常に強力であることが想像しやすいです。
ちなみにエボシは天朝の命でシシ神胎児を行っていますので、天朝との関係は良好です。しかし当時はすでに天朝の権力が衰えていたことから、アサノ公方は戦いを仕掛けてきたのでしょう。
もののけ姫の謎や疑問を考察
ここではもののけ姫に関する疑問や、謎について迫ってみましょう。奥が深い作品なので、その背景に眠る情報がたくさんあります。たくさん浮かぶ謎や疑問が解消されることによって、もっともののけ姫が楽しめるようになるのではないでしょうか。
もののけ姫の謎や疑問①アシタカはぜエボシに笑われるのか?
もののけ姫に出てくる少年アシタカは、まっすぐな性格、そして素直な心を持つところが魅力です。自分の運命を受け入れて旅に出て、正しい道を探そうとしますが、その先でタタラ場にいるボス的存在のエボシと初対面します。
ちなみにアシタカは「曇りなき眼で物事を見定め、決める」と言葉を放った後に、エボシに呆れたかのような大きな笑いを浴びさせられます。これはエボシが自身のフィールドであるタタラ場を守るために自然界と戦っている背景があってのことで、単純な言葉だけではうまくいかないという思いがあるからこそです。
実際に戦い抜いてきた彼女だからこそ、アシタカの言葉はおかしく感じたのではないでしょうか。正しい心だけでは村は守れないと、エボシのリーダーシップが見えます。
もののけ姫の謎や疑問②シシ神とコダマがあらわすもの
自然界の命をコントロールするかのような「シシ神」は、決して人間や獣たちが簡単に触れてはいけない神秘的な存在と言えます。美しく広大な自然はシシ神のおかげで守られてきた背景が分かりますが、人間の手によってシシ神の首が落されてしまい、自然の崩壊が始まります。
後にアシタカとサンの手によってシシ神の頭はシシ神自信に返されますが、1度壊れてしまった自然は完全には戻りません。一見した感じでは自然に戻るのですが、シシ神のいない森へと変化してしまいました。
ジブリと言えばトトロというイメージが強い通り、可愛いマスコットキャラクター的な存在がたくさんいます。「コダマ」もその一種で、動物や植物以外にも、シシ神の森には何かがいるというイメージから、「コダマ」は誕生しました。
ちなみに「コダマ」はシシ神がいなくなった後にも登場していますので、自然が持つ偉大さ、神秘さは損なわれていないというメッセージにも取れるのではないでしょうか。
もののけ姫の謎や疑問③カヤとアシタカの関係
カヤがタタリ神に襲われてしまいそうになっているところをアシタカが救っていますが、カヤとアシタカは婚約関係にあります。アシタカの年齢は17歳程度、カヤも10代という設定で、タタリ神の呪いがなければ結婚していたことになります。
ちなみにカヤはアシタカが村から出る時に小刀を渡すのですが、これは「女性が未婚のまま、思いを一生遂げる」という意味があります。当時のアシタカは呪い殺される未来が占われていたので、その思いをカヤが汲んだのでしょう。
もののけ姫の謎や疑問④タタラ場に子供がいない理由
タタラ場は当時の背景には珍しく、女性がとても強く生きている描写がたくさんあります。宮崎駿監督はこのシーンに思入れがあって、子供を入れることによってややこしくなってしまうと判断した結果、あえてタタラ場では子供がいないような感じになっているようです。
物語の最後にはエボシはたくさんの村人を失ってしまう形になるのですが、そこからまた新しいタタラ場として再興することでしょう。そこには子供もいるはずです。
もののけ姫の謎や疑問⑤子供たちに伝えたいこと
宮崎駿監督はもともと子供たちのエールになるような作品を作りだしてきました。しかし現代の子供にはそれだけではなく、現実世界の厳しい部分を知った上で、強く生きて欲しいと考えた結果、「もののけ姫」がつくられたとインタビューで答えています。
人類がやってきたことは本当に正しいのか、そして生きるというのはどういうことなのかと、難しい永遠のテーマをあえて物語に組み込みました。生きる世界の意味を、大人も子供も考えるキッカケになった作品とも言えます。
もののけ姫の謎や疑問⑥アシタカとサンのその後は?
アシタカとサンが惹かれあっているのは物語の中でもよく分かるのですが、サンは人間を信じられずにいます。その結果サンは今まで通り森で、アシタカはタタラ場で暮らすことを決意します。しかし森には時々行きたいとアシタカが話している通り、それぞれの生活を大事にしながら、お互いを思っていく形になったのでしょう。
ちなみにスタジオジブリから発売された絵コンテの中には、アシタカがサンにプロポーズをして、それを受け入れる姿が描かれています。映画の中ではハッピーエンドという感じではないものの、その後は2人仲良く共に生きていったということが分かります。
もののけ姫の時代から環境問題はあった?!
もののけ姫はファンタジー要素だけではなく、自然界に眠る神秘や人間との問題をテーマにつくられた壮大な物語です。映画を見終わる頃には色々考えさせられることになるのではないでしょうか。この機会に再びもののけ姫を見返して、物語に眠る意味を回収してみましょう。
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