映画「魔女の宅急便」内でミステリーの一つとされているのが、キキが飛べなくなった理由です。劇中にはキキは魔力が弱まり、ホウキで飛べなくなって落ち込む場面が描かれています。
そこで今回はキキの持っている魔法や飛べなくなった理由などについて考察していきます。この記事を読んで、作品の世界に浸ってみましょう。
目次
魔女の宅急便のあらすじ
13歳になった魔女のキキは、ある晩に両親のもとを離れ、一年間の修行の旅に出ることになります。相棒の黒猫ジジとホウキにまたがったキキは、紆余曲折を経て大きな港町コリコにたどり着きます。
そこでふとした出来事から、パン屋「グーチョキパン」のオーナーであるおソノと出会ったキキは、パン屋の上で寝泊まりする事となりました。
おソノのアドバイスで宅急便屋を始めることになったキキは、若い女性画家ウルスラや孫思いの一人暮らしの老婦人、そしてトンボたちと交流し、さまざまな困難を乗り越えて、魔女としてさらに成長していくのです。
劇中ではキキが突然ジジの話している言葉が分からなくなったり、ホウキで飛べなくなったりなどピンチに陥る出来事もあり、見ている人をハラハラさせます。
主人公キキのプロフィール
キキは魔女である母親コキリと、民俗学者である人間の父親オキノの間に生まれ、13歳になるまで両親の愛をめいっぱい受けて育ちました。誕生日は2月2日です。
兄弟はおらず、一人っ子です。人間の友達も多く、旅立ちの日にはみんなが見守ってくれている様子も描かれています。魔女と言えば使い魔と一緒にいる印象ですが、キキの相棒は黒猫のジジです。
【魔女の宅急便】キキの魔法について
キキの母親コキリはホウキの乗って空が飛べるだけでなく、薬草から薬を作ることもできます。キキにはどんな魔法があるのか、ここで解説していきます。まだ「魔女の宅急便」を見ていない方もすでに何度も見ているという方も、参考にしてみてください。
キキの魔法は才能
キキの魔法はホウキに乗って空を飛ぶことです。残念ながら母親のコキリのように、薬草で薬を作ることはできないですし、ほかにできる魔法もありません。飛ぶ以外にできる特別なことと言えば、黒猫のジジと会話ができるという点ぐらいです。
しかしながら「ホウキで空が飛べる」というのは、魔女の血が流れているからこそできることであり、普通の人間には絶対にできません。つまり、ホウキに乗って空を飛ぶという魔法は、キキが生まれ持った才能なのです。
物語ではわかりやすいように、「空を飛ぶ」のが才能となっていますが、私達にも生まれながらにして持っている才能があります。人よりスタイルが良い遺伝子を持った人はモデルになりやすいですし、生まれながら音楽の才能に恵まれ、プロの音楽家として活躍している人もいます。
キキにとって「空を飛ぶ」のは、こういった才能と同格だと言えます。そう考えると、一見ファンタジーな世界の主人公キキが、より身近な存在に感じられます。
スランプは誰にでもある
ストーリーの中でキキはスランプに陥り、絵描きのウルスラに相談する場面があります。そこでウルスラは魔法と絵は似ていると話し、自身の経験からキキにアドバイスをします。絵描きであるウルスラも、絵が描けなくなることがあり、そんなときは自由気ままに描きまくるか、描くのを一切やめると語っています。
そしてしばらく絵から離れているうちに、また筆を手に持ちたくなり、そのときに再び描けるようになるというのです。このウルスラがキキに話したことは、角野栄子が執筆した原作にはなく、映画を作った宮崎駿の言いたかったことをウルスラが代弁しているそうです。
このことを心に留めながら、今一度この場面を見てみると、心に染みるものがあるかもしれません。自身も過去にスランプを乗り越えた経験がある方、今スランプを感じている方にぜひチェックしてほしい場面です。
【魔女の宅急便】キキが飛べなくなったシーン
キキがコリコの町で暮らすようになり、宅配便業を通じてさまざまな住人と接点を持ちます。配達途中、華やかに着飾った町の女の子たちに黒ずくめのファッションをバカにされたり、荷物を受け取った女の子に冷たくあしらわれたりなど傷つくことも増えていきます。
そんなある日、雨に打たれたキキはひどい風邪をひき、寝込んでしまいます。そしてホウキで飛べなくなるだけでなく、黒猫のジジと会話ができなくなるなど、トラブルが起きていくのです。
【魔女の宅急便】キキが飛べなくなった理由&考察
魔女のキキがどうして飛べなくなったのか、その理由についてはさまざまな都市伝説がささやかれています。ここではいろいろな人に語り継がれている飛べなくなった理由とその内容について考察してみましょう。
理由&考察①恋をしたから
自由に空を飛んでいるキキの魔法に憧れるトンボと親しくなったから飛べなくなったのではという説もあります。確かに私達の場合、恋をすると仕事や勉強に集中できなくなったり、いつもできていることができなくなったりすることは多々あります。
劇中では、キキがトンボの存在を意識している場面はいくつも描かれていますが、それが恋なのかというといまいちはっきりしません。実際にアニメ映画を作った宮崎駿も、「恋仲になったとは思っていない」と語ったこともあるので、恋をしたから飛べなくなったというのは少し違うようです。
理由&考察②イップス
キキが飛べなくなった理由として、イップスがあるのではという話もあります。イップスというのはもともとゴルフで使われていた言葉で、精神的ストレスから自分が思うようなパフォーマンスがとれなくなることを意味します。
元来はスポーツで使われていた言葉ですが、最近ではスポーツ選手以外にも使われる表現なので、この機会に覚えておくとよいでしょう。キキは1人暮らしを始めてから、一人前の「仕事人」として町の住人たちと接しています。
それまでは両親のもとで、子供として自由な生活を送っていたにも関わらず、13歳で一人の「大人」としての生活を余儀なくされているのです。そのため、知らぬ間に精神的ストレスやダメージを受け、イップスを引き起こしたのではともいわれています。
理由&考察③生理がきたから
キキが13歳ということで、ちょうど思春期に当たることから、「生理がきたのでは?」という説もあります。確かに生理が始まる頃には体内でホルモンバランスも変化するので、そのバランスの変化が魔女としての才能に影響を及ぼすとも考えられます。
劇中では、キキによる「魔女は血で飛ぶ」というような会話もあるので、血に関係する「生理が理由」という発想が生まれたようです。空を飛べなくなったキキがお腹を押さえる場面も描かれており、生理を示唆しています。
実際に宮崎駿によると、飛べなくなった理由について女の子の思春期特有のものと答えたこともあり、生理が影響しているという説が濃厚です。
理由&考察④人間と関わりすぎた
実家を出て一人暮らしを始めるまで、魔女である母親と共に暮らしていたキキは、すでに魔女という存在に理解のある人々に囲まれて育ちました。
しかし一人暮らしを始めたことにより、魔女という存在をなんとかほかの人に理解してもらえるよう努力する必要があったほか、人間と関わることにより人が持つ嫉妬や自己中心的な態度といったマイナス面を知りました。
そのことが、これまで純粋な性格だったキキに何らかの影響を及ぼし、飛べなくなったのではという説もあります。人間のどす黒い感情が、キキを汚したということですが、その反面、おソノさんやウルスラのようにキキをいろいろな形で支えてくれる、温かい人間がいることも事実です。
理由&考察⑤劣等感を抱き自信がなくなった
シンプルな黒のワンピースに身を包んだキキは、アニメの主人公にしてはシックないでたちです。そんなキキは、トンボの友達である女の子たちに劣等感を抱き、それが飛べなくなった原因ではないかと考える方もいるようです。
確かにトンボの周りにいる女の子たちは、華やかな色合いの服に身を包み、オープンカーでドライブに行くなど、派手な印象です。キキが彼女たちに対し、地味な服装で、さらに仕事をしているという状況を比べ、劣等感を抱き、飛べなくなったと考えた方もいます。
ジジと話せなくなる理由も同じ!
ストーリーの中で、ある日突然キキはジジと話せなくなります。普通にニャーと鳴いているジジに対し、キキはパニックにも近い状態に陥ります。幼少期から一緒に暮らし、一人暮らしの相棒でもあったジジと会話ができなくなるというのは、キキにとってはかなりの痛手でした。
このジジと話せなくなった理由も、キキが空を飛べなくなった理由と同じだとされています。さらに宮崎駿は、ジジが話せなくなったのではなくキキが変わったといったことも話しており、やはり「生理」により、心身が成長したからとも考えられます。
【魔女の宅急便】キキが再び飛べるようになった理由は?
ストーリーの最後の方で、キキはスランプを乗り越え再び飛べるようになりました。その理由のひとつに、大切な友人であるトンボが飛行船のロープにつかまった状態で宙づりになってしまい、それを助けられるのは「自分しかいない」という使命感が挙げられます。
これまで一人暮らしで宅急便屋をしながら修行してきたキキは、トンボの絶体絶命の大ピンチを目にして、その才能を再び開花させたのです。
それまでいろいろな環境の変化に順応しようと必死で頑張ってきたキキが、自分のホウキではないデッキブラシにまたがって飛べたというのは、すべてを乗り越えた瞬間でもあります。
どんな環境や状況にも順応して、自分の才能を発揮できるようになったキキは、魔女としてさらに一回り大きく成長しました。
魔女の宅急便は少女だったキキが成長する姿を描いている
「魔女の宅急便」は、少女だったキキが成長する姿を描いており、時には困難を乗り越えスランプに陥りながらも頑張るキキに「自分を重ねて見た」という方も多いようです。今回の記事を参考にして、今一度映画を見返してみると、新たな発見があるかもしれません。