ジョーダン・ピール監督の作品「ゲットアウト」は、人種差別を題材にしたホラー映画として注目が集まっています。今回は、そんな注目度の高い映画「ゲットアウト」のあらすじや残された謎について、徹底考察します。新進気鋭の監督は、どのような切り口から斬新な題材なホラー作品を作ったのか…映画ファンなら必見の内容です。
目次
映画『ゲットアウト』とは
まずは、映画「ゲットアウト」について、その概要に迫ります。作品の背景を知ることで、より映画に対する理解が深まることでしょう。これから鑑賞する方も、すでに観たことのある方も、ゲットアウトについて深く知るために参考になさってください。
ジョーダン・ピール監督のデビュー作品
映画「ゲットアウト」は、個性的なホラー映画で評価の高いジョーダン・ピール監督のデビュー作です。彼はアフリカ系アメリカ人で、以前は俳優やコメディアンとして活躍していたという、マルチな才能に溢れる人物です。
コメディ番組の制作や、セサミストリートのビッグバードのモノマネなどを行いコメディアンとして活躍する一方、俳優としても活動を続けていました。映画監督としてのデビューはゲットアウトが初めてで、脚本もご自身で執筆されています。
アカデミー賞脚本賞を受賞した本作は、デビュー作とは思えないほどの完成度の高さで、その才能の高さが窺えます。また、デビュー作ということもあり低予算で撮影されているにも関わらず、興行収入は高く大ヒットを記録しました。
俳優としての活動も継続されているので、ご自身が撮影されたフィルムにも登場することがあるジョーダン・ピール監督。ゲットアウトの次に発表したのは、こちらも大ヒットを記録した「Us」ということで、これからの映画監督としての活躍にもますます期待が集まります。
人種差別がテーマのホラー映画
ゲットアウトのテーマは人種差別であり、これは監督自身の特殊な出自に関係があるとされています。さらに、コメディアンとしても活躍していたジョーダン・ピール監督らしく、作品内にはただ風刺が込められているだけではなく、コメディタッチな描かれ方がされている部分もあります。
ホラー映画初心者の方でも楽しめるフィルムですので、これまでに観たことのないジャンルの映画を開拓したいという時には是非鑑賞してみてください。また、多くの伏線が散りばめられた作品でもあり、本格派のストーリー展開が好きな方にもおすすめできます。
日本人には馴染みの薄い、米国社会に潜む黒人差別問題について、映画を通じてその根深さを実感できるでしょう。
『ゲットアウト』の簡単なあらすじ
主人公はニューヨークに住むアフリカ系アメリカ人のクリスです。白人の彼女ローズと交際している彼は、ある週末に彼女の実家に案内されることとなります。少しの不安を抱きながら彼女の家を訪れる彼でしたが、そこでは過剰なまでの熱烈な歓迎を受けることになるのでした。
しかし、彼女の家に黒人の使用人がいることに多少の違和感を覚えます。その夜、庭を猛スピードで駆け回る管理人と、窓ガラス越しにこちらをじっと見つめる家政婦の姿を目撃します。あまりの異常さに、クリスは動揺を覚えました。
あくる日、ローズの亡くなった祖父を讃えるパーティーに多くの友人が出席してきましたが、なぜか彼らのほとんどが白人で、クリスは気が滅入ってしまうのでした。しかしそんな中、ある古風な雰囲気を身に纏った黒人を発見します。
目を引かれたクリスは、彼のことを撮影するのですが、フラッシュが焚かれた瞬間、彼は鼻血を流しながら「出ていけ!」と豹変したように叫び、襲いかかってくるのでした。非常な事態に思えたクリスは、彼女の実家から逃げようとローズと一緒に画策するのですが…。
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『ゲットアウト』結末までの【ネタバレ】あらすじ
ここでは、ゲットアウトのネタバレを含むあらすじをご紹介します。まだ試聴していない方で、ネタバレは避けたいという場合は読み飛ばしてください。
一方、視聴する前にあらかじめ、ネタバレを含むあらすじを追っておきたいという方や、一度見たものの記憶が曖昧であるという方は、ここでゲットアウトのあらすじを確認しておきましょう。
【ネタバレ】あらすじ①黒人のクリスを歓迎するローズの家族
黒人青年のクリスは、白人の恋人ローズの実家、アーミーテージ家に招かれ共に挨拶へ行くことになりました。ローズは自身の家族に黒人男性と付き合っていることを話しておらず、クリスは一抹の不安を覚えながらも彼女の家へと向かいます。しかしそこでは、彼の意に反して厚くもてなされたのでした。
しかし、使用人ジョージーナが黒人の女性であることや、管理人のウォルターが黒人男性であることに妙な違和感を覚えます。ただ、自分を歓迎してくれていることに変わりはないようなので、クリスはあまり深く考えないようにします。
その夜、煙草を吸いに外へ出た時のこと、しきりに鏡で自分の容姿を確かめるジョージーナや、自分の方へ向かって猛スピードで駆けてくるウォルターの姿を見て、異変を覚えたクリスは急いで家の中へ引き返します。
しかしそこで、ローズの母親であり心理療法士であるミッシーに引き止められ、催眠術をかけられたクリスは眠ってしまいます。
【ネタバレ】あらすじ②パーティーと謎のオークション
翌日になると、クリスは喫煙できなくなっていました。昨夜ミッシーにかけられた催眠術は、禁煙するためのものだったのです。悪夢を見たのだと思っていたクリスに、ミッシーは「禁煙できるようにした」と言い、そのような行為を勝手に行った彼女に違和感を覚えます。
その日アーミーテージ家で開かれたパーティーには、多くの招待客が集まりました。しかし彼らのほとんどは白人であり、クリスは居心地の悪さを覚えます。それに、彼らが自分に接する態度に心地悪いものを感じたのです。その中には盲目の画商、ジム・ハドソンもおり、彼はクリスの目を羨ましがりました。
唯一黒人の招待客であったローガン・キングは、年上の白人の妻と共にパーティーに参加していました。クリスはローガンに対しても、ジョージーナやウォルターに感じたのと同じような不自然さを覚えます。
催眠術のことといい、不安が高まっていたクリスは携帯電話を使い、海上保安局で働く友人のロッドに催眠術のことも含めて相談します。ジョージーナは携帯の電源を切り、なぜかそれを邪魔しようとするのでした。
相談されたロッドは、白人はクリスをセックスのパートナーとして利用するだけだと警告し、ローガンの写真を送るように言います。クリスはその言葉に従いローガンにカメラを向けますが、フラッシュが焚かれた途端、彼は逆上し「ゲットアウト(出ていけ)!!」と叫び襲いかかってくるのでした。
ローガンはミッシーの部屋に連行され、催眠術によって落ち着きを取り戻します。しかし、底知れぬ違和感に苛まれていたクリスは、ローズと共に帰ろうと身支度を始めます。その頃、パーティー会場ではなぜか、クリスの写真を使って謎のオークションが繰り広げられており、盲目の画商ジムが落札するのでした。
クリスがローガンの写真を送ると、ロッドは「知り合いで行方不明になっているアンドレではないか」と疑念を持ちます。帰り支度を進めるクリスでしたが、ローズがたくさんの黒人男性と共に映る写真や、ジョージーナと映った写真を見つけ、彼女にも疑いを持ち始めます。
急いで逃げようとするクリスでしたが、ローズは車の鍵を渡そうとせず、ジェレミーに襲い掛かられてしまい、ミッシーによる催眠術にかかった彼は深い眠りに落ちてしまうのでした。
【ネタバレ】あらすじ③秘密組織の手術
催眠から目覚めると、クリスは椅子に縛り付けられていました。そこで、パーティーは黒人を標的にした会合であったことが判明します。ローズは黒人を恋人として騙し、弟は誘拐、母は催眠術をかけ、父はオークションの落札者である白人の脳を、黒人の身体に移植していたのです。
白人たちは移植を行うことで黒人の肉体を使い、永遠の精神・生命を得ることが目的だったのでした。この手術は祖父の代から受け継がれており、パーティーを含む全てはクリスを騙すために仕組まれたものだったのです。
オークションでクリスを落札した盲目の画商の脳を、クリスの身体に移植しようとするローズの父。しかしクリスは催眠術の合図を聞かないようにすることで、なんとか窮地を脱する手立てを探そうと足掻いていました。
タイミングを見計らって、ローズの弟ジェレミー・父ディーン・母ミッシーを倒したクリスは、逃亡を図ります。
【ネタバレ】あらすじ④恐怖からの脱出
車で逃亡しようとするクリスに襲いかかる、黒人家政婦のジョージーナと管理人のウォルター。実はジョージーナにはローズの祖母の、ウォルターにはローズの祖父の意識がそれぞれ植え付けられていたのです。車中でクリスと取っ組み合いになったジョージーナは、そのはずみに木に衝突して命を落とします。
一方ローズとウォルターがその場に追いつき、ウォルターはライフルを持ちクリスに襲い掛かろうとします。そこでクリスがカメラのフラッシュをウォルターに向けると、彼はクリスに向けていた銃口をローズの方へ向け直し、彼女を撃ちます。
祖父の意識に戻ったウォルターは、孫を撃ってしまった事実から、自らにも銃口を向け自殺しました。まだ意識のあったローズはライフルでクリスを殺そうとしますが、クリスは抵抗して彼女の首を絞めようとします。
しかし、どうしても彼女を殺すことができません。そこに駆けつけた警察官に、状況から悪者にされそうになったクリスでしたが、共にその場へ駆けつけたロッドによる説明で彼の疑いは晴れました。去っていくクリスの姿を見つめるローズが映り、物語は幕を閉じます。

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『ゲットアウト』の主な登場人物/キャスト
ここでは、ゲットアウトに出てくる主な登場人物とキャストをご紹介します。どの人物がどのような背景を持つのか知っておくことで、実際に映画を鑑賞するときに頭の中を整理しながら楽しむことができます。相関関係が分からなくなった際の参考にしてください。
クリス・ワシントン/ダニエル・カルーヤ
俳優のほか脚本家としても活躍するダニエル・カルーヤは、この作品でクリスを演じることで一躍有名になりました。現在は様々な賞にノミネートされており、今後の活躍が期待される俳優です。
そんなダニエルが演じたクリスは、彼女を愛する穏やかな黒人青年。彼女と過ごしている時は本当に幸せそうだっただけに、今後精神を病んでしまわないか心配になる人物です。
ローズ・アーミテージ/アリソン・ウィリアムズ
まだ出演作が少ないものの、今後の活躍が期待されるアリソン・ウィリアムズは、チャーミングに見えて恐ろしい女性、ローズを見事に演じ切りました。ローズの優しい笑顔からは恐ろしい本性が隠されていると思えません。
普段は人種差別に苦言を呈する女性として描かれており、物語の冒頭においては正義感あふれる白人女性として登場します。
ミッシー・アーミテージ/キャサリン・キーナー
ローズの母親、ミッシーはキャサリン・キーナーが演じました。心理療法師として高い腕前を持つ彼女は、ことあるごとにターゲットを催眠術にかけ、物語の中で重要な役割を果たしました。
ディーン・アーミテージ/ブラッドリー・ウィットフォード
ブラッドリー・ウィットフォードが演じたのは、外科医であるローズの父ディーンです。オバマ政権を支持することを明言したりと、クリスに対して人種差別をしないことを過剰なまでにアピールします。
ジェレミー・アーミテージ/ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが演じたのは、ローズの弟であるジェレミー・アーミテージです。クリスに友好的に接するローズの家族の中で、彼に対し挑発するなど他とは異なった態度を見せます。
ロッド・ウィリアムス/リル・レル・ハウリー
リル・レル・ハウリーが演じたのは、主人公クリスの陽気な友達、ロッド・ウィリアムスです。コメディアンであるリル・レル・ハウリーは、キャラクターをチャーミングに演じ切っており、独特の存在感を放ちます。クリスを救う役どころとして重要なポジションを担います。
『ゲットアウト』の見どころ
見どころはなんといっても、脚本の秀逸さにあります。アカデミー賞の脚本賞を受賞したことからも、その面白さは疑いのないものです。人種差別の風刺を描きながら、独特の不気味な世界観を創造することに成功したゲットアウトは、その卓越した脚本に注目して見てほしい作品です。
【ネタバレ注意】『ゲットアウト』の残された謎を考察
ゲットアウトには残された謎がいくつかあります。ここでは、作中で見られるいくつかの謎に迫ります。ネタバレを回避したい方は、閲覧を控えてください。
謎①「鹿」は何を意味していたのか
映画の冒頭でクリスたちが誤ってはねてしまった鹿は、「ブラックバック」という種類のメスでした。ブラックバックには「白人女性を襲う粗暴な黒人男性」という意味の、偏見に基づくスラングの意味も持つ言葉です。
さらに、鹿は「彼女を作ろうとして失敗する男」という意味のスラングでもあり、この時点でクリスの運命は暗示されていました。
謎②「フラッシュ」で正気に戻っていたのはなぜか
フラッシュにより鼻血が出て、一瞬だけ元の黒人の意識が浮かんでくるのは、ある実話に基づいたアイデアです。それは、2014年にニューヨークで起こった、白人警察官が黒人男性を逮捕しようと押さえつけ、そのまま窒息死させてしまった事件です。
その一部始終はスマートフォンで撮影されており、裁判の際の証拠になったのだといいます。この事件を風化させないように、人種差別への抗議としてアイデアが映画に取り入れられたのです。
謎③タイトル『ゲットアウト』の意味
ゲットアウトは直訳すると「逃げ出せ」という意味になります。作中でも、錯乱状態に陥ったローガンがクリスに対し「ゲットアウト」と叫ぶシーンがあります。
アーミーテージ家から脱出するストーリーにぴったりのタイトルですが、人種差別意識の強いアメリカから抜け出したいという黒人の叫びであるとも受け取れます。
『ゲットアウト』は自分の隠れた差別意識に気づかされる映画
ゲットアウトはまさに、自分の中に秘められた差別意識に気付かされるような作品です。世界中で話題になったのも頷けるプロットの作り込みと、場面ごとの恐怖の煽り方は、ジョーダン・ピール監督だからこそなせる技といって良いでしょう。
これまでにない新しい切り口から人種差別問題を描く彼の作品は、ホラー映画として楽しめるだけでなく、深いメッセージが込められています。今一度、その部分にも着目しながら鑑賞してみてください。